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はてなブックマーク - おおつちさいがいFMから元気を発信~「ぐるっとおおつち」小向幹雄さんに聞く~

2012年3月31日、ショッピングセンター「シーサイドタウンマスト」(大槌町小槌)2階に、「おおつちさいがいFM」※1が開局した。スタジオブースはまだなく、マスター機材とマイクを、店舗の通路に面した長机に並べたものがスタジオだ。
目の前を人が往来する中での生放送だが「緊張するけれど、見守ってくれてる気もする」とFM局スタッフは楽しそうだ。

同FM局を大槌町から運営を任されているのは、NPO法人「ぐるっとおおつち」。同法人は、大槌町唯一の、震災前から運営を続けている老舗のNPO法人。2012年5月には、代表理事の小向(こむかい)幹雄さんが「いわて災害コミュニティメディア連携・連絡協議会」の会長に任命された。「新しいものにはすぐ食いつく」という小向さんに、震災以前からFM局開局までを聞いた。


「ぐるっとおおつち」の設立は、全国的に「NPO」が始まったとされる平成13年。当時の小向さんは、定年をむかえたばかり。28歳から8年間、会社員と掛け持ちしながら町会議員をつとめた経歴もある小向さん。「『NPO』という形で、現役を退いた自分たちにもできることがあれば」と、元職場である「新日鉄釜石」の同僚など有志で同法人を設立した。信条にしているのは、「小さいことでもいいから何かやろう」という思い。震災以前は、地産地消の野菜作りの推進や、地元のものづくり団体の支援など、様々な活動を展開していた。

【小向さんの携帯電話には、「おおちゃん」が。】


震災では、団体理事2名、メンバー数名が犠牲になり、会員の動向もわからない日々がつづいた。「さすがに体調を崩し、しばらく落ち込みました」と小向さん。しかし、2011年4月当時、外部のボランティアが避難所を運営しているのを見て、地元の人間として動かなくてはと感じ始めた。小向さんは、当時活動の中心となっていたNPO法人「パレスチナ子どものキャンペーン」の協力を得て、自身の団体の活動を再開した。


避難所、仮設住宅の巡回から活動を始めた小向さん。その中で目に付いたのは、避難しているお母さんたちが手持無沙汰なことと、買い物に行けないこと。
買い物に関しては、今までの活動のノウハウを生かし、野菜の移動販売を始めた。

【おおちゃん・こづちちゃん人形】




お母さんたちには、内職を生業にしてもらうべく、大槌町のキャラクター「おおちゃん・こづちちゃん」のマスコット人形を作成してもらい、販売のサポートをしている。
なお、この人形は大槌町内の仮設店舗やNPO法人「遠野まごころネット」で買うことができ、おみやげとして人気だ。


小向さんに、災害FM開局の相談が来たのは7月だった。
阪神淡路大震災時に発足した「株式会社FMわぃわぃ」※2から大槌町へFM局開局のサポートの話があるのだが、町としては余力が無い、ということだった。「そういう話があるなら、まずやろう!」同法人と小向さんの信条に、FM局の運営はピタリとはまった。
8月から準備を始め、求人や契約締結など、苦労もあったが、無事3月31日に開局することが出来た。


「情報発信は、これからどんどん力を入れていかなくてはいけない。思わぬチャンスだと思っています。災害FMの期間は2年間。その間に、大槌町の市民・団体とできるだけつながって、必要だと思われるFM局にして行きたい」と小向さん。

FM局のスタッフは、みな初心者だが、震災から1年を迎えたこのタイミングでラジオを配信できることに大きな意味を感じている。
パーソナリティーの1人、金崎伊保子さんは「すべてが初めてのことですが、楽しみながらやっています。大槌の私たちにできることは、まず私たちが元気になること。ラジオが、みんなが元気になるための種になればと思ってます」と話す。
小向さんの思いは、スタッフ1人1人に伝わっている。そして電波を通して全国へ届いていくだろう。

※こちらの記事は、2月に取材した内容に、FM局開局後の5月に追加取材をして、再構成いたしました。


2012年3月31日 山根麻衣子

▽リンク
NPO法人ぐるっとおおつち http://www.guruttootsuchi.org/

記事内注
※1 大槌町に臨時災害FM局を開局 仮設などへ地域情報(河北新報記事より)
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20120401_07.htm
※2 株式会社エフエムわぃわぃ
http://www.tcc117.org/fmyy/index.php

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